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 夏休みにオススメ!「ランサム・サガ」
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夏休みにオススメ!「ランサム・サガ」

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 夏休みになると思い出すのは、ランサム・サガです。
「ツバメ号とアマゾン号」(岩田欣三/神宮輝夫訳 岩波書店)で始まる全12巻のアーサー・ランサム全集でしか翻訳されていないので、知る人ぞ知る、という類の児童書です。ケース入りの大きくて分厚い本。装丁は素っ気なく、グレーの地にヨットの絵が小さく描いてあるのみ。今でこそ、ハリポタ現象で分厚い本も読まれるようになりましたが、なかなか手にとってもらいにくい外観をしています。それでも、シリーズを並べると、ヨットの色がグラデーションで青からオレンジへ変化しています。また、ケースには、ヨットがその巻数分描かれていて、おしゃれです。図書館だと、ケースがないので、そのことがわからず残念です。

 原書が書かれたのは1930年~47年。第1次大戦と第2次大戦にはさまれた時期。ランサムは、行動的なジャーナリストで、第2次大戦では従軍記者として、またロシア革命などの取材もしたようです。若い頃は文学論も書いていました。作中の子どもたちのように、子どもの頃は釣り好きな父親に連れられて、よく湖水地方を訪れていたようです。

 作品としは古く非常に地味な本なのですが、熱狂的ファンがいて、ちゃんとアーサー・ランサム・クラブというファングラブも存在します。今回調べたら、いくつもファンサイトができていました。この本を読んで、ヨットマンをめざした、アウトドア派になった、など読んだ子どもの人生を動かしたほどのものでもあります。それでも、子ども時代にこの本について語り合える仲間を見出した人は少ないようで、だからこそ、大人になって同好の士と巡り会えた喜びはひとしおです。主な舞台となったイギリスの湖水地方には、ランサムファンの日本人観光客がしばしば訪れるそうです。

 物語は、イギリスの湖水地方で夏休みを過ごすウォーカー兄弟が、民宿のヨット・ツバメ号を操り、子どもたちだけで湖上の島でキャンプ生活をするところから始まります。第1次大戦後、少しのんびりとした時代を背景に、寄宿学校に通う子どもたちの、家族で過ごす長期休暇、めいっぱい遊ぶことだけしか考えなくてもいい夏休みを描いています。現実にテントでキャンプ生活をしながら、そこに陣取り合戦や探検など空想の世界になりきって暮らします。この、現実とごっこの世界の取り混ぜ方が上手くて、しっかりとその世界を生きる子どもの視点で描かれています。子どもだけのキャンプ生活も、具体的に描かれていて、火をおこしてお茶を入れる。魚を釣って、内蔵を出すのは嫌な作業といいつつ、そこも省略せずにちゃんと書いて、そしてフライパンで焼く。毎朝、湖で顔を洗い、近くの農場に牛乳を取りに行く。一方で、コンビーフをペミカンといい、樽に詰めたレモネードはジンジャービアと呼ばれます。虚実をわかっていながら、空想の世界を何人もで共有しながら過ごす、そのような休みの過ごし方にものすごく憧れました。

 主な登場人物は、ツバメ号を操るジョン、スーザン、ティティ、ロジャの4人のウォーカー兄弟。アマゾン号のナンシイとペギイのブラケット姉妹は、自宅が湖の畔にあります。その後同じ湖にやってきたドロシイととディックのカラム姉弟は、考古学者の親たちが常に海外にいて、長期休暇も子どもだけで過ごすことが多いのです。この3組のきょうだいたちが、巻ごとに全員揃ったり、揃わなかったりしますが、メインです。舞台が湖を離れることもあります。

 第1巻でロジャは7才、読みなおしてないので、はっきりとは覚えていませんが、一番上のジョンが、13、4才くらいでしょうか。ナンシイは少し上で、ペギイが同じくらい。D姉弟はティティの前後。ジョンはいかにも長男らしく、下の子たちについての責任を持ちます。「嘘つき」呼ばわりされていたく傷つくように、パブリックスクールの伝統に生きています。スーザンは、後半になればなるほど母役割を引き受ける存在になります。このように時代を感じさせる造形はあちこちにあるのですが、それでも、自ら決断して実行する力、帆走技術やキャンプ技術を含めて、があるのは男女ともです。そういう点が、家庭的ではないアマゾンたちの姿なども含めて、私にもできるかも、という希望を与えてくれたように思います。ランサマイト(ランサム・ファン)には結構女性がいることの理由かもしれません。

 そして、重要な登場人物に、ウォーカー兄弟の母と父、ブラッカム姉妹の母や叔父など、理解ある大人の存在があります。彼等はティーンになるかならないかの子どもたちを、彼等だけで帆走に、そしてキャンプへと送り出します。どちらの母親も、自分の子ども時代にはやはり帆走しキャンプ生活を送ったようなのです。ただし、携帯などない時代、ウォーカーさんは、毎朝契約したキャンプ地のそばの農場に、牛乳を取りに行かせることによって、つながりを保つよう計らいます。また、キャンプ地を訪れたときには、子どもたちの設定に応じて、土人役を引き受けたりもします。子どもたちは自分たちのごっこも含めて、母にはなんでも話せるという信頼関係を築いているのです。こういう親がいるからこそ、幸福な子ども時代を過ごせるのだなあと、大人になって読み返してみると、しみじみ思います。

 読むのなら第1巻の「ツバメ号とアマゾン号」から順に、とは思いますが、大雪の中D姉弟が活躍する第4巻「長い冬休み」、嵐の中兄弟だけで北海を航海することになってしまう第7巻「海へ出るつもりじゃなかった」、全員で帆船航海に出た先での冒険を描く第12巻「シロクマ号となぞの鳥」もそれぞれ人気がある作品で、それだけを読んでも充分楽しめます。

私は、個人的には第5巻「オオバンクラブの無法者」が一番好きです。書いていたら読み返したくなってしまいました。実はこの全集は、私の数少ない蔵書のひつとです。(本屋のくせに?だから?本は借りて読むのが原則です)就職して早々に、毎月1冊ずつ買い足して揃えたのです。実家にあった本は、私の本ではなかったので。それだけ思いのあるシリーズです。

13.gif


1「ツバメ号とアマゾン号」岩田欣三/神宮輝夫訳
2「ツバメの谷」神宮輝夫訳
3「ヤマネコ号の冒険」岩田欣三訳
4「長い冬休み」神宮輝夫訳
5「オオバンクラブの無法者」岩田欣三訳
6「ツバメ号の伝書ハト」神宮輝夫訳
7「海へ出るつもりじゃなかった」神宮輝夫訳
8「ひみつの海」神宮輝夫訳
9「六人の探偵たち」岩田欣三訳
10「女海賊の島」神宮輝夫訳
11「スカラブ号の夏休み」神宮輝夫訳
12「シロクマ号となぞの鳥」神宮輝夫訳
 

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Comment No.1

はじめまして。この育児サイトにひつじさんのコーナーが
できたことを大変喜んでおります。我が子は身体だけはとっくにデカくなり既にしっかり自分の縄張りを確保しちゃっています。いわゆる問題の思春期世代…。さあ、こうなるとわかりにくいですよ~、なにしろ何考えているんだかさっぱり!!とにかく年中「不機嫌」が漂ってるんですから。
そんな時、ひつじさんのコラムを読むとホッとします。
本は大好きだけれど、読書傾向はやや違うかな。でも、これからも楽しみにしていますので宜しく!

Posted by ノートン : at 8 10, 2005
Comment No.2

こんにちは、ノートンさん
思春期・・・大変ですよね。荒れ狂う思春期の子が主人公の本も沢山出ていますよ。欧米では、ホルモンのせいで本人にもどうしようもないこと、時期が過ぎれは変わる、と考えられているようですね。でも実際目の前で不機嫌に八つ当たりされると、辛いですよね。
どんなことがあっても、あなた自身が好きだよ、信用しているよ、というメッセージが伝わればいいのですが、難しいですよね。
本を読んで気分転換して、乗り切ってください。

Posted by ひつじ : at 8 11, 2005
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